マーケティングは「考える順番」で結果が決まる――成果を出す人が必ず最初にやっている“調査と思考整理”の本質
nozomumichimura@gmail.com
マーケティングは施策から始めるとうまくいかない。成果を出す人が最初にやっているのは「調査と思考整理」。戦略の土台となるリサーチの本質を、実務視点でわかりやすく解説。
マーケティングがうまくいかない本当の理由
マーケティングが成果につながらないとき、多くの人は施策の質を疑います。広告のクリエイティブが弱いのか、SNSの運用方法が悪いのか、コピーが刺さっていないのか。しかし実際には、その前段階で判断を誤っているケースがほとんどです。
マーケティングは「何をやるか」よりも先に、「何をどう考えたか」で結果が決まります。どれだけ優れた施策でも、前提となる認識がズレていれば、努力は空回りします。成果を出している人ほど、目立たない準備の時間に最もエネルギーを使っています。
調査とは「情報を集めること」ではない
調査という言葉から、データ収集や市場調査を思い浮かべる人は多いかもしれません。しかし、それは調査の一部にすぎません。本質は、意思決定の精度を上げるために考える材料を揃えることです。
私が調査の段階で常に意識しているのは、次のような問いにきちんと答えられる状態をつくることです。
- なぜこの市場で戦おうとしているのか
- なぜこの顧客を選ぶのか
- なぜこの判断は「妥当だ」と言えるのか
これらに感覚ではなく根拠を持てるようになると、マーケティングは驚くほどブレなくなります。調査とは答えを導く作業ではなく、間違った判断をしないための思考整理だと考えています。
外部環境を見る意味は「流行を追うこと」ではない
外部環境を分析するというと、トレンドや最新技術を追いかけるイメージを持たれがちですが、本質はもっと地味です。重要なのは、自分たちではコントロールできない変化が、ビジネスにどんな影響を与えるかを理解することです。
社会の価値観の変化、経済状況の変動、技術の進化、制度やルールの変化。こうした要素は、知らないうちに顧客の判断基準を変えていきます。外部環境を整理することで、「以前は正しかったが、今は通用しない前提」に気づくことができます。
外部環境を見る目的は、未来を当てることではありません。
思い込みを外し、視野を広げることにあります。
自社を見るときに陥りやすい落とし穴
自社分析というと、「自分たちの強みは何か」を探したくなります。しかし、この問いだけでは現実を見誤ります。強みは単体で存在するものではなく、市場や顧客との関係性の中で初めて意味を持つからです。
自社が持っている資源や能力が、どんな状況で価値になるのか。逆に、どんな場面ではほとんど役に立たないのか。ここまで考えて初めて、戦略として使える判断材料になります。
「できること」と「勝てること」は違います。
自社を冷静に見るとは、希望的観測を捨て、使える武器と使えない武器を切り分けることだと思っています。
顧客理解は「属性」ではなく「判断基準」を知ること
顧客を理解すると言うと、年齢や性別、職業といった属性情報に意識が向きがちです。しかし、マーケティングにおいて本当に重要なのは、顧客が何を基準に選択しているかです。
人は常に論理だけで選んでいるわけではありません。合理性と感情が混ざり合いながら、「これでいい」「これが安心だ」と判断します。だからこそ、顧客理解では次のような視点が欠かせません。
- どんな瞬間に不安を感じるのか
- 何が決め手になって「納得」に変わるのか
- どこで比較をやめ、選択を確定するのか
顧客を知るとは、データを集めることではなく、判断が起きる構造を理解することだと考えています。
フレームワークは「答えを出す道具」ではない
分析フレームワークは非常に便利ですが、それ自体が答えをくれるわけではありません。フレームワークは、思考を整理し、見落としを防ぐための補助線です。
大切なのは、形を当てはめることではなく、「何に気づけたか」です。使う目的を見失うと、分析した気になって判断が浅くなる。だから私は、フレームワークは“考えるための型”として使うようにしています。
調査のゴールは「やらないことを決めること」
調査や分析の結果として、最も価値があるアウトプットは何かと聞かれたら、私は「やらないことが明確になること」だと答えます。
どこで勝負しないのか。
どの顧客は追わないのか。
どんな施策には手を出さないのか。
これが決まると、戦略は一気にシンプルになります。選択肢を増やすためではなく、迷いを減らすために調査を行う。この意識があるかどうかで、その後のマーケティングの精度は大きく変わります。
まとめ
マーケティングは、派手な施策よりも地味な思考の積み重ねで成果が決まります。調査とは情報収集ではなく、判断の精度を高めるための準備です。
外部環境を冷静に見つめ、自社の現実を直視し、顧客の判断基準を理解する。この順番を丁寧に踏むことで、施策は自然と意味を持ち始めます。
マーケティングで結果を出したいなら、まずは「何をするか」ではなく、「どう考えるか」を整えること。そこからすべてが始まると思います。
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